ZR1実走レポート No.14
ZR1/Z06でのサーキット走行 その1
1)ZR1/Z06はC6Rのロードバージョンか
Z06/ZR1を乗り継いできた立場では、C6R直系のロードバージョンと考えたいが、実際はGMの販売するC6 CORVETTEシリーズの高性能モデルだ。Z06と標準モデルのC6 CORVETTEとの主な相違点は7L DrySumpエンジン、アルミ合金製のフレーム、拡大された前後フェンダー、275/325サイズのタイヤ等だが、6速トランスミッションやデフはC6 CORVETTE 6M/Tモデルと同一となる。また内装もZ06のロゴがシートに入る以外は同じ仕様で販売されている。
ZR1もスーパーチャージャー付きエンジン搭載と、6速クロスレシオトランスミッション、カーボン外装パネル等が付加されたが、Z06と同様C6 CORVETTEの高性能モデルである。
以上の通り、ZR1/Z06ともにレースカーのC6Rのデチューンバージョンではなく、C6 CORVETTEの高性能モデルとなるので、サーキット走行を行う場合は基本的な事から準備をしたい。
ZR1/Z06でサーキット走行を行う場合、馬力が大きく平均速度も高くなるので、下記の項目の装着が必要、もしくは装着が望ましい、となる。
*4点式以上のシートベルト装着
*バケットシート装着
*エンジン冷却の見直し
*ブレーキ冷却の見直し ダクトの取り付けとDot4以上のブレーキOIL交換等
*OILクーラーの容量アップ
*牽引フック装着(着脱式も可)
*消火器の搭載
*ロールケージ装着
2)エンジンとブレーキの冷却に関して
梅雨の晴れ間の今日はZR1でいつものコース(自動車専用道路で信号と渋滞は無し)を約50kmほど走行したが、気温は33度とかなり暑かったこともあり水温は88度~92度、油温は95度~105度となった。やはり気温の上昇と共にノーマルラジエターでは水温を80度~90度以下に保つ事は厳しくなってきたようだ。これは信号の多い一般道ではなく、上記の通りの高速道路に近い状態での水温等だが、これではサーキット走行は難しいと言わざるを得ない。
サーキット走行は約4,800~6,800回転と高い回転数を保って周回する事が多く、上記の様な高速道路に近い一般道を走る場合より遥かに厳しい条件となる。
ZR1で走行後、同じコースを今度は620馬力仕様のT氏のZ06で走行した。アルミ製大容量ラジエターを装着している効果で、水温はZR1に比べて5度程度低めに保もてたのと、久々に620馬力Z06の楽しさを満喫できた。
このZ06は2007年式ルマンブルーで現在15,000km。約5,000km時に620馬力チューン等を作業させて頂いたが、これまでの10,000kmはトラブルも一切無く絶好調。R888とのマッチングも良く中部~関西では最も速いZ06だ。
Z06では大容量ラジエターへの交換効果でZR1よりは水温の余裕があるが、やはりサーキット走行では、はるかに高い回転数を保って周回する事になるので、Hood等の改造で熱気を積極的に抜く事が必要になる。
さて具体的な冷却能力アップとしては下記の2項目を行いたい。
*大容量ラジエターと低温サーモへの交換。水温を80度~90度に保つ事が絶対必要。油温は水温+15~20度迄が目安だ。無理な走行は車を傷める危険性が高いので注意したい。
*ラジエターへの外気導入と、積極的にラジエター後の熱気の排出。C6Rの様なラジエターマウント方式が熱気の排出効果では理想だが、改造にはかなりの作業時間等を要するので難しいと思う。できればルーバー付きHood等で熱気を抜きたい。ルーバー付きHoodはダウンフォースを発生する効果もある。
これまでZ06用ラジエターはアメリカのRon Davis製を使ってきたが、漏れの経験は何度かある。ZR1用も同じくRon Davis製が3月に入荷しているのだが、漏れの確認をしてから装着をする予定だ。アメリカ製のラジエターは、漏れの発生や、装着時のフィッテングの精度問題があり、信頼性は日本製部品には劣る事が少なくなかった。これらの経験から必ず装着前の確認と加圧点検が不可欠と常々思っている。
とにかく大排気量のZR1/Z06でサーキット走行をしようと考えるのなら、水温は80度~90度に保つ事が絶対に必要。水温が100度を越えると点火タイミング等の制御が自動的に入り、十分なPerformanceが発揮できない様に設定されているが、理由はエンジン保護の為だ。
稀にサーキット走行で水温120度超、油温は130度以上になったと聞くが、これは絶対に避けたい状況だ。サーキット走行は十分なエンジン冷却の確保をしてから行いたい。
ブレーキの冷却に関して ノーマルキャリパーの可能性
まずZ06でサーキット走行をしようと考えているなら、パッドを交換する前にブレーキの冷却が必要となる。これはキャリパーとローターの両方の冷却だ。フロントブレーキの冷却用のブレーキダクトは3インチ(76mm)なら最低2本づつの左右で4本は絶対に必要。できれば3本X2で6本が良い。リアは1本づつ左右で2本以上が最低でも必要。ナックルの形状の都合でダクトの取り付けが難しいが、とにかくブレーキローターとキャリパーの冷却を行いたい。ノーマルキャリパーとパッドでも十分な冷却をする事でサーキット走行はかなり楽しめると経験上思う。レーシングキャリパーは確かに制動力アップと軽量化効果があるが、コストパフォーマンスは悪く、Z06に必要な制動力を求めると最低100万円以上の費用を要することになる。機会があれば十分な冷却をしたノーマルキャリパーを装着のZ06と、レーシングキャリパー装着のZ06でラップタイムの違いをチェックしてみたい。
ZR1のセラミックカーボンブレーキローターは、周回を繰り返すサーキット走行には向かない。冷却不足のサーキット走行で、無理な周回を繰り返す事は、ローターだけでなくパッドやブレーキキャリパーの寿命を縮めることになる。もしサーキット走行専用に使うなら、レース用のカーボンローターが良いが、温度が上がらないと効きが悪く制動が安定しないのと、装着に要する費用が大きいので、一般道を主に走る我々には向かない。
ブレーキの冷却不足はパッドやローターだけでなく、キャリパー本体のシール等も熱で傷むことになる。サーキット走行をするなら十分なブレーキ冷却が絶対に不可欠だ。