Z06実走レポート No.20
早いもので今月16日でZ06に乗り始めてから2年になり、実送レポートも20回もの回数になった。Z06との2年間をまとめてみることにした。
総括
諸費用を含めると1000万円を超える車両価格だが、十分それに見合う車と思う。性能的には立派の一言に尽きる。スタイルも魅力的だ。C6クーペの発展がただが、実際の印象は別の車に感じる。例えるなら、昔のR32クーペとGT-Rの違いか。欠点ももちろんあるが、それを上回る魅力のある車だ。自分の率直な気持ちとしては、Z06はこの2年間で歴代コルベットの中で最も好きなコルベットとなった。1976年より32年間コルベットを乗り継いできた。先々代のZR1も好きだが、Z06はより速く楽しい。
エンジン関係
OHVながら、7000回転でリミッターが作動するまできっちり回る。アイドルや低回転でも乗り易く、燃費も良い。実際の印象も500馬力は確実に出ているだろう。
効率の良い吸排気パーツへの交換で、40馬力~程度の出力アップが可能となり、乗り易さと速さを両立したライトチューニングとして好結果を得た。この仕様で数ヶ月乗ったが、Z06に乗る楽しさが倍増した。マフラーを交換した事で、一言で言うと排気音も心地よく変わった。ノーマルマフラーはバルブが閉じた状態では軽く軽快な排気音だが、バルブが開くと豪快というか、かなり野太く粗野な感じにの排気音が気になった。テスト的にマフラーのバルブ制御のバキュームホースをはずしてみると判るが、確かに大きくなるが決して快いとは言えない。
市販品マフラーテストではBorlaとCorsaが好結果を得た。確実な出力向上が確認でき、かつ1800回転付近のこもり音も適度に抑えられていた。因みに、当時唯一の単純な楕円形日本製マフラーは出力の向上も無いだけでなく、テストしたマフラー中こもり音が最も大きく、かつ40万円超の価格は理解に苦しんだ。
その後のマフラー開発で再認識したのは、高圧縮7000ccエンジンの消音の難しさだ。出力を犠牲にすれば消音は楽だが、高出力と心地よい排気音の両立は難しい。アイドルと低回転でうるさく、高回転で消音し過ぎの傾向が顕著に現れた。特に616馬力カムKITを組み込んだ時は、排圧の高さで空気が振動する位うるさかった。
結論としては、
- マフラー容量を大きくする
- チャンバー効果を得られるような構造のマフラーにする。
に至った。
限られたスペースと、左右マフラーで16kg程度の重量に収めるには必然的に[2]になる。現在、ようやくチャンバー構造をもつマフラーが完成しこれからテストに入る。
2007年よりハイカムへの交換を試みた。まず616馬力カムKIT装着した。このKITにはカムシャフト、強化バルブスプリング、チタンリテーナー、専用ECM,専用吸気システム等が含まれる。出力的には、確実に600馬力オーバーでずばり速いが、ハイカムの典型的な出力特性と乗り難さとなった。特にアイドル時のうるささと、2000回転位までの乗り難さが問題だった。このカムで約1年間を過ごしたが、競技仕様のカムでストリートは不向きとの結論に至った。
2008年5月に待望の新型620馬力カムKITを組み込んだ。昨年末よりこのKITを2台のZ06に組み込んだが、頗る好結果を得ていた。
一言で言うと、より速いのに乗り易い、という理屈に合わない様が頗る好結果を得た。この新型カムは度数こそ616馬力カムとほぼ同水準だが、リフトが10%程度高く当初は乗り難さを予想した。ところが良い意味で予想に反した。現状では330km以上と予測される最高速と、確実に11秒前半の加速性能だ。アイドル時のうるささはノーマルと616馬力カムの中間よりやや大きいかな、といった程度だ。ストリート用Z06のハイカムはこれで決まりだ。
サスペンション関係
Z06のサスペンション設定は概ね良好だが、乗り慣れてくるとやはり柔らかさが気になる。それと板バネというのも好きではない。
4輪ダブルウイッシュボーン形式というスポーツカーの基本にして最も優れたサスペンションを奢られているのに、相変わらず板バネでは魅力が半減だ。しかし車検等も考慮に入れると、この形式を踏襲せざるを得ない。
新車時のZ06にてチェックした結論だが、アライメントの確認と再調整を行うことで、直進性と乗り易さが大幅に改善できたZ06が多かった。実際の経験からの判断だが、新車時のアライメント調整が、許容範囲で合わせているのが原因のようだ。当社では安定性、直進性の最も優れた数値にピンポイントで調整している。特にトーインの数値はシビアに影響が出た。参考までに F:0mm程度、R:2~3mm程度が経験上の数値だ。
またコルベットのブッシュの材質と構造が原因と思われるが、かなりアライメント数値が変化し易いのも特徴だ。適正値に合わせてからテスト走行、再度測定すると数値が変わる事が確認でした。対策としては、アライメント調整と再確認を根気強く繰り返す事だ。タイヤのバランス取りでも同様の事があるが、一度だけで「ハイ、バランス完了です」は嘘だ。再チャック、再々チェックが必要だ。325mmサイズの大きなタイヤのバランス取りは195mmや205mmサイズとは違う。Z06のサスペンションはこまめにチェックをする事が大切だ。
それとサスペンション、サブフレーム等の増し締めも効果がある。これも入庫したZ06からの経験だが、緩みが確認できた事が少なくなかった。同時に空気圧のチェックも必要だ。驚くことにご来社頂いたZ06の大半で空気圧が高すぎた。Z06の空気圧は冷えた状態で2.1kgがメーカー指定値だがこれは厳守すべきだ。高性能スポーツカーの場合、乗る前の空気圧点検、OIL点検とリフトアップしたら各部の目視点検と増し締め欠かせないと経験上断言できる。
まずショックアブソーバーから手を入れた。Z06純正装着のショック、ビルシュタイン製ショック、当社のレース用ビルシュタインショックの3種類の減衰力の測定と比較からスタートして、乗り易さと高速安定性、コーナリング時の安定性等のバランスを取りながら開発した。純正ショックは縮み側が最初から強く、立ち上がりも早い。対して延び側は弱い。これは問題と判断し、ビルシュタイン製ショックでテストを繰り返した。最終的にはノーマルショックからの単純交換作業で装着できるショックを、車高別に2種類造った。ノーマル車高用と1インチダウン用の2種類だ。特徴としてはしなやかで乗り易さく、加速時と高速での安定性が大幅に改善できるショックとなった。またZ06は車高を1インチ程度下げるとルックスだけでなく、重心がさがり安定性が増す。ところがノーマルショックで車高を下げた場合、ストロークの確保が難しく、ショックアブソーバー本来の働きに支障を来たす結果となる。そこでケース長等を詰め、低車高専用ショックを開発した。
板バネ併用コイルオーバーサスペンションを開発した。Z06のサスペンションは、板バネの特徴で車高を下げるとスプリングレートも下がる。元々柔らかめのZ06だが、より柔らかくなるのは良くない。WEST製板バネ併用コイルオーバーサスペンションは約50%~のレートアップが可能で、乗り易く安定性がありスポーツカーらしいサスペンションに劇的に変わる。適正なヘルパースプリングを使用する事で、バタつき等は一切ない。またショックアブソーバーの減衰力も、ストリート用、Sタイヤ用、サーキット専用の3種類を設定した。スプリングレートも3種類がある。もちろん車高を下げる事もOKだ。数台のZ06に装着したが、好評を頂いている。もちろん車検に問題ないと考えている。
アルミフレームのZ06の場合、ロールケージの装着が難しく従来のコイルオーバーを装着するとアッパーマウントに全荷重がかかりその対策が難しい。因みにレースカーのC6Rは鉄フレームを採用しているのも、その理由が含まれるからだろう。