Z06実走レポート No.8
(1). Z06の走行距離はまもなく3000kmになるが、エンジンのアタリがついてきたのが実感できるようになった。本来Z06のエンジンLS7は新車時から軽く吹き上がるのが印象的だったが、最近は特に高回転の軽さが顕著だ。ここの所、外気温が5~10度、水温80度、油温85~90度で走っているが気持ち良く速い。尚この油温はエンジンOILクーラー全体をテープで塞いで保っている。他のZ06にラジエター内臓式水冷式OILクーラーを装着したが、ずばり当たった。水温は安定し、油温はガムテープ無しでも水温プラス10~を達成できた。特に暑くなる夏場はZ06にとって大容量ラジエターと水冷式OILクーラーの装着は欠かせない装備だ。
(2). Borlaマフラーは少し排気音が大きくなったが好調だ。トルクが細らずに馬力をしっかり稼いでいる感じだ。但し、大き目のマフラーチップ(出口)に砂が溜まるのが目立った。試しにチップだけを小径(54mm)に交換した。品番はBorla#20153で大きさはノーマルのチップとほぼ同じだが、これは排気音にも効果があった。うまく表現できないが、低回転では少し静かだが、高回転でより鋭い高音に変わり力強さが増した。本社工場で同乗サービス中ですので、興味のある方はご利用下さい。
(3). 幸い大きなトラブルは無いが、少量のOIL漏れがエンジンOILパンとドライサンプホース取り出し口から続いている。それ以外ではステアリングのラックから少量の漏れが確認できた。また無負荷時にハンドルが左に回ってしまう症状が出ている。今の所、走行時の直進性には影響が出ていないがラックの故障が原因らしいので確認中だ。
(4). 良かったのは以前から続いたデフからのOIL漏れが止まった。デフの圧抜きバルブの掃除と右側オイルシールの交換で効果が有ったようだ。このトラブルは来社頂いた2台のZ06でも同様に右側のOILシールからの漏れが確認できたので、よくあるケースのようだ。尚、このシールはデフを下ろさずとも交換できる。
(5). さて年末から予定していたカムシャフトの交換が未だ出来ない。実は年末、まさに作業に取り掛かる寸前LPEよりバルブスプリング交換が必要との連絡が入った。当初この616馬力KITのカムにはバルブスプリングの交換が不要との設定だった。ところが本国でのその後のテストにおいて高回転でトラブルが出たらしい。その様な次第で急遽バルブスプリングを手配したが、全て年明けに延びてしまったが、1月の末までには完了の予定だ。
(6). 写真の後輪ホイールはTE37の19インチだ。タイヤサイズは305/30ZR-19、ブレーキは8/4ピストンのBremboキャリパーを装着した。この状態での軽量は1箇所で9~11kgと大きい。4輪合計で40kg近い軽量が達成できたことになる。但し問題点も出た。まず8ピストンキャリパーは軽い制動時にコトッとパッドの当る音が出る。また通常の8ピストン用パッドはレース用のみとなる為、ダストとキーッと鳴きが目立つ。対策としてエンドレス製のストリート用パッドを注文した。
Z06のブレーキはコルベット史上最も素晴らしいと断言出来る。効き、タッチ共に素晴らしく、実用性に関してはコストも含めOKだ。唯一重量が重いことが気にかかっていたので、今回試験的に競技仕様のBremboを装着した。パッドは前後とも同じ物を装着した。テストの結果、パッドとの相性が顕著に現れることが判明した。
まずフェロードの#4003を装着したが、ダストの多さと効きに問題が発生した。ローターの斑模様はこの時の状態だが、ブレーキング時に振動が発生した。なじみが付けば収まるかと期待したがより悪化した。効きは普通、但し初期タッチは鋭い。ダストはかなり多く、制動時の鳴きと振動等、問題点が目立った。コスト的には国産パッドより2割程度高めなのと、選定時の情報が少ない事の改善を望みたいと思う。
次はPFCの#93を装着した。#93はPFCの中でも完全なレース仕様のパッドでコストも高い。まず効きは圧倒的に良くなった。ダストは意外に少なく、フェロードの70%位に感じた。気になる振動はフェロードに比べてかなり減少した。1/3程度以下の振動に収まった。ローター表面はカーボンプリントが綺麗に付いているが、やはりミューの高いパッドならではのローター攻撃性の強さの痕も残っていた。コスト面があるのでストリート使用は控えるが、やはりPFCは安心して使用出来るレース用パッドと再認識した。競技やサーキット走行では不可欠のパッドだ。
最後にエンドレス製のSSS(ストリートパッド)が入荷したので装着した。レーシングキャリパー用は全て特注ベースとの事で3週間程度の納期を必要とするらしい。さて装着結果は良好だった。効きはPFCにはもちろん劣るがストリートでは十分で全く問題の無いレベル、Z06純正キャリパーと純正パッドの組み合わせと比較しても一回り以上制動力アップを得られた感じだ。
顕著なのは純正キャリパーも含めた中でダストが最も少ないのと、効きが唐突ではなく滑らかに制動することだ。また振動もほとんど感じないレベルに減少した。約100km走行後にローターを観察したが満遍なく綺麗にあたっているのが確認できた。改めて日本製チューニングパーツの完成度の高さを再認識した次第だが唯一コスト面で疑問が残った。レーシングキャリパー用に特注した場合、同じSSSパッドでも国産車用の2.5倍近い価格設定が痛い。
(7). テスト的にコントロールアームのブッシュをスフェリカルベアリングに交換した。これまでWESTオリジナル競技用部品としてC4,C5用を製作してきたが、C6用も新たに製作した。特徴としてはスフェリカルベアリングの耐久性アップとスムースな作動を狙ってダストブーツを装着したことだ。ベアリングサイズはBMWT16。カラーは錆を嫌ってステンレス製、ボルトは強度の関係で特殊鋼を表面処理して使用した。
あくまでも競技用部品だが、装着後の印象は純正ブッシュとは次元が違ったレベルとなった。最近の新車ではFerrari 599GTBに純正採用されたらしいが、その試乗記にも書かれているように「路面からの突き上げ感が強く感じる」のが特徴というか今後の課題だろう。WESTとしては、ストリートでの使用においては、即ピロではなく剛性、耐久性の高いラバーブッシュの開発が先と考えている。
その他としてバッテリーを純正のものからレース用のシールドタイプに替えた。重量減が6kg、印象としてはクランキング時の元気よさが感じられた。メーカーの主張するトルクアップ、馬力アップは実測してないので数値は不明だが、交換後悪くなった感じは一切無いと断言できる。
以上が最近の状況だ。各部の軽量化の恩恵なのか走りはより鋭さが増した。ずばり速い。正直な所、特に3速の全開加速時は怖い位だ。今後カム交換で4000回転~7000回転において40~50馬力以上の出力アップが期待できそうだが、同時に600馬力オーバーで実測車重1330kgのFR車ならではの乗りづらさが出てくるかもしれない。しかし率直な所、速さには大いに期待している。
総合的にみてZ06のエンジン特性(カム)はよく煮詰められていると云える。海外のZ06テスト記事でも、1/4マイル11秒後半、最高速315km以上を安定して記録している等、乗り易さ実用性と高性能を併せ持った素晴らしいエンジン特性だ。
Z06は確実にスーパーカー以上の実力を持ち、かつコストパフォーマンスに関しては間違いなく世界一のスポーツカーと云えるだろう。まさにスーパーカーキラーと云われる所以か。2000年以降のルマン24時間レースGTSクラスでの実績は伊達ではない。コルベット愛好家として、Z06の実力は嬉しい限りである。
近日中にカム交換、ECMのリプログラムをKnippエンジンで行う予定だ。
後輪ホイールをTE37の18インチから19インチに交換テスト装着した。オフセットはノーマルより2mm外側になる様セッティング、タイヤは同サイズがないので305/30ZR19、ちなみにフロントは265/35ZR18と前後で少し小さいがグリップ、乗り心地共に問題は無い。尚、車高はノーマルより1インチ程度↓、キャンバーはやや強め、トーインはリアのみ3mm程度に合わせている。
写真の通り、黒色の車体にブロンズゴールドのTE37は悪くないと思う。ところで、Z06に標準装着のGYはトラクションは良く、出足のグリップも悪くないが、ドライグリップだけでなく雨天時の走行、静かさ等を総合的に考えると、やはりPS2やRE050を選択するだろう。
競技用部品となるが、Z06用スフェリカルベアリング仕様コントロールアーム。ベアリングはNMBのステンレス製高荷重タイプにダストシールを付けた。カラー類もステンレス製、強度の必要なボルトはクロモリ鋼を調質して使用。取り付け、アライメント調整共にノーマルと同様。
装着時は写真の通りアーム、スプリング、ブレーキ関係等の脱着が必要でかなりの作業時間を要する。装着後はライメントの再調整はもちろん必要。コルベットの足回りもずいぶんすっきりした印象を受けるようになった。前後のアーム形状はC5に似ているが、同一ではなく細部が変更されているので互換性は全く無い。
装着後で左がフロント、右がリアーとなる。キャリパーと同じ硬質アルマイト仕上げのローターベルでメカニカルな雰囲気を醸し出している。パッドはフェロード#4003→PFC#93→エンドレスSSSと試したが、公道ではエンドレスSSSが総合的に良かった。サーキットではPFCを使用の予定。
左がフロント、右がリア。コルベットの足回り、ブレーキ周り共にずいぶんすっきりした印象だ。ローター、キャリパー、タイヤホイール等で約40kg近い軽量が達成できた。常識的な足回りの部品交換だけで、約40kg近い軽量が可能なのも開発者の狙った所か。つまり完全ノーマル状態のZ06は、本当のZ06の実力ではなく、車高↓とブレーキ、タイヤホイール、バケットシート等の交換で車重1330kgを達成。さらに、実用的で乗り易い550~600馬力エンジンを搭載したのが、Z06の正体と考えると楽しい。
#4003パッドでローターには斑模様が現れ、ブレーキング時には振動が発生した。パッドの焼入れ、脱着、面取り等試したが効果は無かった。結果的にはパッドの交換で解消したが、改めてパッドの難しを実感した。尚、振動はローターベルの剛性不足にも原因があると考えられる為、厚さを増しリブを伸ばしたベルにて再テストの予定。(※写真左)
マフラー出口(Tip)を同じBorlaの小径タイプに交換した。従来の大き過ぎるTipは排気音の問題と、走行後にTipの内側に砂が溜まるのが気になっていた。#20153へ交換後は、見た目にもすっきりし、控えめな感じが良い。同時に排気音質にも歓迎できる変化が現れた。低回転では少し静かになり、高回転では割れた感じが控えめになり、澄んだ排気音に近づいた様に思えた。(※写真右)
左がフロント、右がリア。Z06純正装着の赤いキャリパーも良いが、硬質アルマイト色特有の渋い色のキャリパーとローターベルが、黒色のZ06にしっくりと収まっている。ホイールはブロンズゴールドのTE37。
Z06シフターを試作ショートストロークシフターに交換してみた。写真左側がZ06純正シフター、手前方向にシフターが傾斜している。バックへのシフトを考慮しての傾斜らしいが、今ひとつ馴染めない。右側はC5純正シフター、傾斜が無く直立で約1cm高いのと防振部が長い。C5、Z06共にシフター下部構造等は同一らしい。さてZ06にC5改ショートストロークシフターを各比率でテスト中だが、ノーマル比10%減あたりが自然で操作し易い。これも経験だが,アメリカ製のB&M、Hurst等は過度にショートストローク過ぎるのと、前後左右の比率が今ひとつ不自然で操作し辛かった。(※写真左)
Z06の右側フロントフェンダー内側、青いパッドはエンドレス製SSSパッド。左側のアルミ製タンクはドライサンプ用エンジンOILタンク。30年以上コルベットに乗ってきたが、Z06には標準装備でドライサンプエンジンが、搭載された事は理屈抜きで嬉しい。例えばC4の時代は、フレームの補強に始まり、エンジン、ミッション、ブレーキ軽量化と全てに手を入れる必要があった。高性能と言われたZR-1にしても、エンジン作業こそ少しは減ったが、その他は同様だった。コルベット愛好家にとっては、有難い時代になったと云える。(※写真右)
Z06のショックアブソーバー交換テストを下記の通り行うことにした。Z06純正→(1)ビルシュタイン→(2)T-1→(3)ビルシュタイン改WEST仕様。併せてZ06と(1)ビルシュタインと(2)T-1の減衰力の測定も行ったが、伸び方向の減衰力にかなり違いが確認できた。後でその測定グラフも掲載予定。
まずZ06純正から(1)ビルシュタインに交換した。写真左がZ06純正で写真右がビルシュタイン。取り付けマウントブッシュはノーマルを装着した。一般道での印象は特に硬くなった感じや突き上げ感は無く、ブレーキング時のノーズダイブはやや減ったかな、といった感じだ。20km程走行後、高速道路に進入、3500回転で流してみた。第一印象は交換前に比べて乗り易い。次は2速ー3速-4速と全開加速で挙動をチェックした。変化が感じられた。出力の向上に伴い最近気になっていた挙動、特に3速全開時の不安定さを感じていたが、それがかなり減ったと云える。確認の為数度同じパターン、減速後2速ー3速-4速へと加速してみたが、明らかに違いが確認できた。さらに数日間のテスト走行後、次のショックアブソーバーを試す予定だ。