Z06実走レポート No.11
5月も中旬になり一気に暑くなった。Z06は走行距離がやっと5000kmに近づいた。走行距離と共に吹き上がりも軽さが一段と感じられ快調だ。つくづく思うが、最近のコルベットは故障も少なく乗り易くなった。項目別にレポートをまとめてみた。
トランスミッションの異音減少
連続して高速道路を走行した時に聞こえてきたトランスミッションからの異音は、OILを交換する事でかなり減少した。エンジンの高出力化とグリップの良いタイヤでの走行は、駆動系各部の負担が大きくなる。Z06等最近のコルベットは6MT車でも、総合的な理由でAT OILを使用しているケースが多い。低負荷な一般走行では問題ないが、Z06のような高出力車でガンガン走ると、やはり駆動系各部の負担が大きくなりAT OILでは不安だ。
対策として、ミッションOIL交換テストを次の2パターンで行ってみた。まず日本製の高出力対応AT OILに交換した。具体的にはHyperSだ。このAT OILはかなりの優れもので、28万キロ走行でシフトショックが大きくなったヘタリ気味のミッションも蘇った経験が有る。これは私の通勤号での経験だ。因みにこの車はミッションオーバーホール無しで16年間、28万キロ走行しているが、ミッションの寿命が延びたと喜んでいる。HyperSは通常のOILに比べて熱にも強く粘度指数も高い、AT仕様のコルベットに使用しているが全く好調だ。率直な所、これまでの30年間で最も好結果のAT OILと感じている。
さてテスト結果だが、シフトはスムースで入り易いが、異音に関しては若干減少した位のレベルだった。率直な所、悪くは無いが特に大きな変化は感じなかった。機会を設けてもう少し長期的なテストの予定。
次に同メーカーのWR-Gに交換した。粘度はWR-Gの中で最も低いタイプを注入したが、結果は、明らかに異音減少効果が確認できた。また低温時のシフトの渋さ等も一切無く、気に入ったので今後も継続して使用を決めた。
Z06オーナーで、ミッションからの異音を感じているなら、まず高出力対応AT OILへの交換をお奨めする。効果が今一はっきり出ないなら、次のステップとしてWR-GミッションOIL等への交換で効果が期待出来る。但し、低粘度のOILから使用するのが原則だ。サーキットでスポーツ走行をガンガン走るのならWR-Gはお奨めだ。
余談だが、OILを選ぶ場合5Wー30や75W-80等の表示で選ぶ事が多いが、同じ5W-30でも随分粘度が違う場合がある。OILには摂氏40度と100度での動粘度表示と、粘度指数表示が有る。この動粘度表示と粘度指数表示の両方を確認して選ぶ事も必要と思う。
ハイカムのその後、装着後、1000km近く走行したのでかなり馴染んだようだ。ノーマルに比べると乗りにくさは若干残るが、4500回転以上での吹き上がりの速さ、力強さは次元が違うレベルだ。ハイカム装着で一ヶ月を経過した率直な印象は、徐々に良い方向に変わってきた。当初に比べて、エンジンが馴染んだ恩恵か、確実に乗り易くなってきた事も原因だろう。総合的に見て、ノーマルカムがベストという評価は変わらないが、圧倒的に高出力なハイカム仕様は魅力だ。例えばSタイヤに交換してスポーツ走行するなら、間違いなくハイカム仕様を選ぶ。この走りには離れられない魅力がある。
次はノーマルと今回装着したカムの中間程度のカムを試してみたいと考えている。最後に、ハイカム交換によるトラブル、例えばチェックエンジン点灯や排気系、触媒のトラブルは当初のクランク角要学習とスキップシフトエラー以降一切無かった。この程度のリフトと度数なら、それなりに実用性もあるようだ。
高速での安定性
好調なZ06だが、かなりの高速での挙動不安定、特に横風の影響が小さくない事は以レポートした通りだ。対策としてアンダーボデー、車体の下の整流を行う事で安定性を確保すべく、早速開発に取り掛かった。フロントスポイラーやリアウイングを装着してダウンフォースを得る事はもちろん有効だが、今回はアンダーボデーを改善して車体全体でダウンフォースを得る仕様の開発を始めた。車体全体でダウンフォースを得ることで、より安定感のある走りが可能だ。具体的には前オーバーハング部分の平滑化、車体中央部分の底板部分の改善、リアオーバーハング部の形状変更とそれに合わせたWESTオリジナルマフラーの試作に入った。
WEST Z06マフラー
マフラーは6ヶ月間慣れ親しんだBorlaからWESTオリジナルに進化した。写真は試作WESTオリジナルマフラーだが、リアデフューザーと一体でデザインした。優れた排気効率とダウンフォースを得る形状に拘った。
早速テスト走行を開始した。速さは、ずばりZ06を乗り始めてから最も速い。特に全開時の5000回転を超えてからの走りはBorlaの比ではない。一段と野太く迫力のある排気音で豪快に加速する。コルベットに乗り始めてから30年を超えるが、これまでで最も速いコルベットになった。
但し、問題も発生した。排気音は常識的に妥協できる範囲内だが、音色とこもり音が問題。特に2000回転辺りのこもり音が大きく、かつ発生回転数が1500~2300回転と広がった。これは明らかにNGと判断し、早速マフラーの形状と構造の見直しに入った。次の写真はテスト中の仮マフラーだが、音量とこもり音はかなり良好な範囲に収まった。具体的にはBorlaと同等、もしくは若干大きい程度でOKなのだが、何故か甲高さが今ひとつ出ない。走りは更に速くなったようだ。トルクが太った恩恵なのか、中速域が上記のテストより速く感じた。検討の結果、この仕様を基本にマフラーを仕上げる事にした。早速試作に取り掛かり近日中にはテストの予定。問題解決の方向性と具体的な改善策は把握できたので、あとは完成を目指すのみだ。ところでBorlaが優れていると再認識したのは、マフラー本体の大きさの割りに、消音効果が大きく音色も悪くない事だ。興味があったのでBorlaを切断してみたが、成程と頷ける構造が確認できた。流石にBorlaはアメリカ製マフラーの中では一押しと云えるだろう。因みに、Eckler’sのカタログにもGMのAuthrized PartsとしてC6用Borlaマフラーが掲載されていた。この辺りが流石にBorlaだ。
余談だが、同じくGMのAuthrized Partsで、C6用Forged Wheelが$3999で掲載されていた。サイズは8.5J/10.0Jでどうも日本製らしい。軽量で高品質に見えるが、価格には正直驚いた。近日中に納品予定のZ06専用TE37は、同じくForged Wheelで9.5J/12.0Jと大きいサイズだが、価格はEckler’sに比べてリーズナブルな設定を予定している。もちろんZ06専用TE37は精度、強度、センターボア取り付け精度、軽量さは、国内外を問わず比較できるホイールは無いはずだ。
ブレーキダスト
Z06のブレーキは6/4ピストンキャリパーで制動力は十分なのだが、ブレーキダストはかなり多い。またロ-ター攻撃性も少なくないらしく、ローター表面がかなり荒れ気味だ。一般的にローター表面を観察する事で、パッドの性格がある程度予測できる。試験的にBremboのキャリパーを装着しているが、パッドは国産品でエンドレス製SSSを使用。キャリパーが違うので若干の相違はあると思うが、このSSSパッドはダストも少なく、制動時のキーッ音も無く乗り易い。2000km程度走行したが、ローター表面はかなり奇麗で滑らかな印象だ。制動力は十分に強く、感じとしては絞り込む様に滑らかに効き、ダストも少なくストリート用パッドとしては文句の付けようがないと思う。この辺りにも日本製チューニングパーツの完成度の高さが窺える。商品化を検討中なので、興味のある方はお問い合わせ下さい。
熱対策
暑くなってきたが、水温80~90度、油温は水温プラス10~15度位を目指して試作中だ。写真はボンネット裏面を、エンジンルームの熱気を積極的に排出し易い形状に加工したが、高速テスト走行では10度近い水温低下を達成できた。また高速道路だけでなく50~60km程度の一般走行でも明らかな効果があった。熱対策KITとして近日中に商品化したいと考えている。ボンネット外観は全く変わらず、ノーマル形状を保っている。
TE37 いよいよ発売
待ちに待ったTE37 Z06専用ホイールの入荷が近づいた。併せてメーカーから価格の発表があるので、近日中に価格と重量等詳細をお知らせの予定。サイズは19-9.5Jと19-12.0Jとなり、オフセットはノーマルより若干外側に出る位だ。TE37は鍛造ワンピースホイールだが、因みに19-12.0Jは日本国内で販売された中で最大の鍛造ワンピースホイールとなる。また18-11.0Jも続けて発売。適合車種はC4のZR-1とZ06、特にSタイヤを装着してのスポーツ走行には最適なサイズとなる。