Z06実走レポート No.15
ようやく暑さも峠を越えたようで、いつものテスト走行コースを一回りした時の水温も少し下がったようだ。やはり水温は80~85度程度、油温は90~100度辺りで調子良い。さて当初よりZ06に見られた、油温より水温が低い設定は2007年式モデルも変わらず、いまだに疑問に思う。最近、2000年式C5コルベットに試乗する機会があった。水温と油温に注意してみたが、意外にZ06と比べて妥当な数値である事を確認した。試乗日は外気温32度だったが、約30分の試乗で水温92度、油温99度辺りを維持できた。念の為、試乗後確認の為リフトアップしたところ、この車には純正オプション水冷式OILクーラーが装着されていた。この水冷式OILクーラーは、Z06用大容量アルミラジエターと同様サイドタンク内に水冷式のOILクーラーが内蔵されている。因みに先々代モデルのC4コルベットにもタイプは違うがオプションで一種の水冷式OILクーラーが装着されていた。冷却水をOILフィルター取り付け基部に循環させる式で、冷却能力は大きくないがOIL漏れの心配が一切無いタイプだった。これでも未装着車と比べて油温は明らかに下がった。
因みにDOHCエンジンを搭載したZR1では、ラジエターと同サイズの大きな空冷式OILクーラーが純正装着されていた。ZR1に搭載されていたLT5エンジンは標準でOIL量も9.5Lと多かったが、4バルブエンジンなので油温上昇が大きくそれに対応したらしい。
以上の通り、ZR1を除く近年のOHVエンジン搭載の歴代コルベットでは、水冷式OILクーラーが純正装着されていた。この事からも大排気量のZ06の適切な水温、油温管理には水冷式OILクーラーが使い易いと言えるだろう。
Z06用大容量ラジエター内蔵水冷式OILクーラーと純正空冷式OILクーラーを比較表にまとめた。
水冷式OILクーラー | 空冷式OILクーラー | |
---|---|---|
油量 | やや増える | 0.6L程度増える |
冷却能力 | 水温以下にはならない | 大きいが冬場はオーバークールの心配あり |
油温安定 | 比較的に安定する | 特に冬場は走行状態で変化が大きい |
水温への影響 | 少ない | ラジエターの前にマウントする為大きい |
漏れの心配 | 配管の接続部のみ | 配管接続部とコア本体の両方 |
装着質量 | 約0.3kg程度 | 約2kg程度 |
飛び石破損 | まず心配無い | 心配あり |
結論、Z06用大容量アルミラジエターと、内蔵された水冷式OILクーラーで一年近くを走行したが、特に大きなトラブルは一切無く、油温は水温プラスほぼ10~15度で安定している。参考としてサーキット走行等を視野に入れ、OILクーラーの能力アップを考えると下記の様になる。ノーマル状態をレベル1として、冷却能力に合わせてレベル4までとした。
ラジエター | OILクーラー | ||
レベル1 | Z06ノーマルラジエター | 純正空冷式OILクーラー | Z06のノーマル状態 |
レベル2 | Z06用大容量アルミラジエター | 内蔵水冷式OILクーラー | WEST Z06の仕様 |
レベル3 | Z06用大容量アルミラジエター | 純正空冷式OILクーラー | ほぼ同位置に装着 |
レベル4 | Z06用大容量アルミラジエター | 大容量水冷式OILクーラー | エンジンの右側に装着 |
※レベル4の場合は、ラジエターのマウント変更を含む。
以上の通り、ストリート走行ではレベル2、サーキット走行ではレベル4が安定した油温管理が可能となる。また大容量アルミラジエターの冷却能力は、一般走行からサーキット走行まで対応可能となりZ06の熱対策ではまず最初に交換をお奨めする。
サーモスタットに関して
Z06純正サーモスタットは約81度で開くタイプが装着されているが、低温サーモ(約71度)に交換する事で、水温低下に効果が期待できる。但し、低温サーモへの交換では冷却能力が大きくなるのではなく、あくまでもサーモの開きを早める事で水温を抑える効果を狙った部品だ。これまでの経験では、低温サーモへの交換で数度の水温低下が確認できたが、但し渋滞が長時間続く様な場合では徐々に水温が上昇してきた。やはり、Z06の水温安定には冷却能力を大きくする事が不可欠と思う。注意、Z06等最近の車ではサーモを取り外す事はNGだ。
ところで、アメリカ製部品の品質と納期には泣かされる事が少なくない。最近の例、コルベット用クラッチKITを取り寄せたが、箱の品番は正しいがカバーとディスクとベアリングの中でカバーのみ他車種の物が混入していた。同じシボレーなのだが、カバーの厚さが5mm程度違い装着できない。また他のケースでは品番と中身は合っていたが、全く装着できなかった部品があった。
最もこれらのケースは最近に限った事ではなく、以前からも同様なトラブルは少なくなかった。仕方が無いと云ってしまえば簡単だが、Z06等コルベットに取り組んでいく以上避けては通れない。特にアメリカ製アフターマーケットの部品は、良否を十分選り分ける知識と経験が必要と思う。
Z06専用ホイール、ショックアブソーバー、スフェリカルベアリング、マフラー、ブレーキパッド等かなりの部品が国内調達になっている。それら以外で輸入パーツは、そのまま装着せず手を入れてから使ようにしてきた。熱対策(水温管理)、ブレーキの操作感と鳴きの大きさ、排気音と音色、タイヤの選定、エアロパーツ、等は我々日本人ならではの味付けをブレンドする事も必要と思う。より乗り易く、より楽しいZ06の開発を目指して行きたいと考えている。
10月からは、いよいよ気温も下がってくるので、空燃比テスト、ビルシュタイン製少し固めのサスKITの発売、サーキットテスト等の予定だ。また待望の高性能タイヤで325/30ZR19サイズがいよいよ発売となるらしいので楽しみだ。