Z06実走レポート No.14
ラジエター
8月に入ると流石に夏本番で暑さが厳しく、Z06に乗る機会が少なかったが、特に問題も無く好調だ。外気温35度で、水温は85度程度を保っている。但しこれは渋滞の無い状態での数値なので当然渋滞では水温は上昇するが、ノーマル状態より10~15度は低く保てる。600馬力超の7Lエンジン搭載のスポーツカーとしては、実用性も損なわれず妥当な所だろう。
因みに以前のビッグブロックコルベット、例えば1970年当時の454エンジン搭載車では、外気温35度以上の真夏日での運転はまず無理と考えていた。当時のコルベットはキャブレターの為、オーバーヒートだけでなく、燃料の加熱が原因の不調が頻繁に発生した。現在のインジェクションと違い、キャブレターの場合は低い燃圧(約1/6程度)と、燃料の循環が遅く少ない為、エンジンルームで燃料が熱くなりがちで、パコレーション等不調の原因になった。インジェクション車の燃料は、高圧かつ常時循環しているので、エンジンルームで熱くなっても、一旦タンクに戻る事で、常に冷えた燃料が循環し供給される構造になっており、同様のトラブルは少ない。
所で、ラジエターのサイズだが、Z06に標準装着されているラジエターの大きさは5.6LのC5と同等で、率直に云って容量不足と云わざるを得ない。比較の写真では、左側が大容量アルミラジエターで右側がZ06の標準ラジエターとなる。見て頂いての通り、サイドタンクの厚さだけでも倍近くあり、当然冷却能力も大きい。
ところが、この大容量アルミラジエターをZ06に装着すれば、熱対策が100%完了で一切の問題が解決する、とはならないのが難しさだ。つまり、余裕を考慮すればもう一回り大きなラジエターが必要だが、Z06ではスペース的にも効率的にもこれ以上大きなラジエターの装着は現実的に難しく、この大容量アルミラジエターのサイズが、純正交換Bolt on で取り付け可能な最大サイズとなる。将来的には、よりコンパクトで高効率な、日本製ラジエターを開発したいと考えている。
因みに、1970年当時の454用ラジエターもZ06の大容量アルミラジエターとほぼ同じ大きさだ。改めて確認したがC4用の大容量アルミラジエターも同様だった。エンジンルームのフレームの間隔、また後ろ倒しのラジエターマウント方式も似ており、ラジエターの厚さもサイドタンク部分で3インチとやはり共通したサイズだ。因みにC5RやC6R等レースカーは、やはり同サイズのラジエターが装着されているが、マウント方式を変えて、空気の流れと効率を最適化し、より大きな冷却能力を確保している。
結論としては、7Lの大排気量のZ06には、このサイズのラジエターが必要最小限の大きさで、同時に装着可能な最大サイズにもなるという事だ。残念ながら、これ以上大きなサイズのラジエター装着は現実的ではないので、より効率的な熱気の抜き方、冷気の導入等を工夫したい。
ミッションOIL漏れ
最近入庫した2台のZ06で、ラジエターに内蔵されたトランスミッションOILクーラーライン付近からのOIL漏れが、’06モデルと’07モデルであった。正確にはミッションOILパイプと、フィッテング内側のOリングの隙間からの漏れだ。
Z06等最近の車輛は、ワンタッチカプラーに似たフィッテングをOILラインに使用している。今回漏れが確認されたフィッテングは、ラジエターサイドタンクの助手席側で、INとOUTの2個が上下で装着されているが、その上側のフィッテングだ。確認したところ、パイプ形状等の具合で上側のフィッテングの方が、首を振り易いというか、動きやすかったが、これも漏れの発生に影響したようだ。
分解の結果は下記の通りだった。
- トランスミッションOILクーラーラインのパイプの外径は、3台で確認したがほぼ同一だった。
- Oリングも取り外して傷、線径、内径をチェックしたが、特に問題は無かった。但し、上記パイプの外径9.5mmに対して、Oリングの内径が9.5mm弱とまったく余裕が無いサイズだった。調べたところ日本製Oリングは同サイズの場合、約0.2mm程度小径に設定されていた。
- 問題は純正のフィッテングだった。手元の5個のフィッテングで試してみたが、トランスミッションOILクーラーラインのパイプを差し込んだ時の抵抗に明らかな違いを感じた。つまり緩く感じるフィッテングと、適度な抵抗感を伴いしっかりとした感じのフィッテングがある事に気付いた。調べた所、原因はフィッテングの内径寸法の誤差だった。僅かな内径の差と、余裕の無いOリングサイズが漏れにつながったようだ。
- 対策としては、純正フィッテングの中で内径の小さい物を選び、Oリング(耐油)を日本製で内径が僅か小さめの物に交換し、早速当社のZ06でテストを開始した。今の所漏れは無く問題なさそうだ。
TE37ホイール
新着のTE37ホイールを装着した。サイズはZ06純正と同じく前18インチで9.5J、後19インチで12.0Jとなり、オフセット値はZ06 純正ホイールより2~3mm程度外側に設定した。以前より当社のZ06に装着していた試作ホイールと比較して、リアのスポーク形状が大幅に変更されている。写真のリアホイールにご注目されたい。本来TE37は、18インチと19インチでスポークデザインが違うため、違和感が多少なりとも有った。今回はメーカーのご協力で、19インチのスポーク形状を、目一杯18インチのフロントホイールに合わせる為、図面から変更して頂いた。出来上がった結果は上々だ。特にリアはディープな感じがよく出ている。同一サイズのホイール装着では、何故かリアのホイールが小さく見えるという錯覚がある。最近のスポーツカーで、リアのホイールサイズを1インチ大きくした例は、C5コルベットを初めNSXやF599GTB等々多い。1インチアップでバランス良く見える。さて装着重量は、Z06純正ホイールに比較して前後とも約1.2kg/本軽量となり、一台分では4.8kg軽量が達成できた。
現在のZ06専用TE37の在庫状況は下記の通りだ。
- Z06専用 TE37 18-9.5J 19-12.0Jセット 在庫 僅か
- Z06リア専用 TE37 18-11.0J Sタイヤ用 在庫 若干余裕有り
- Z06リア専用 TE37 18-12.0J 鍛造マグ競技用 在庫 僅か
以上の通りZ06専用TE37セットの初期ロッドはまもなく完売となり、次回入荷は10月~11月の予定となる。