Z06実走レポート No.13
Z06は5500kmをようやく超えた。
雨が続き走れる日数が少なかったのが、走行距離が伸びなかった理由だ。もっぱら工場内でWEST製Z06マフラー関連部品の試作とテストに時間を費やしたが、色々興味深い結果を得ることが出来た。また改めてマフラー開発の難しさも実感したが、同時に面白さも見えてきたようだ。最近の車はコンピュータ制御が複雑になされており、触れる箇所が少なくなってきたが、その中で排気系は比較的に自由度があり、魅力ある触れる部品の一つと感じている。もちろん開発の難しさは伴うが、結果が明確に表れるのが排気系だ。速さだけでなく耳で直接聞く排気音が極めて魅力的な”ミュージック”になるか、単なる騒音規制の対象になるかはマフラーの出来次第とも云えるだろう。今後より一層”マフラー”に拘り続けたいと思う。
さて今回は予定変更で、入荷したTE37ホイールの詳細と比較マフラーテストの結果をまとめてみた。
(1). TE37ホイール詳細
さて待望のTE37が入荷した。前輪サイズ18-9.5Jは問題なく製造できたらしいが、後輪サイズの19-12.0Jに関しては製造が困難で納期を要したようだ。特に19-12.0Jの1ピース鍛造ホイールは、特殊なレース用マグ以外には前例が無い幅広サイズとなり、製造上の難しさがあったらしい。ともかくコルベット用19-12.0Jサイズの開発、製造、供給に応じてくれたメーカーに感謝をしたい。
写真の通り、まず標準色のブロンズと注文色のシルバーが入荷した。黒色等の特注色は追って月内には入荷の予定だ。またSタイヤ用の18-11.0Jも入荷する。このサイズはZ06に、ポテンザ55Sの装着を前提とした。フロントにZ06用9.5Jを使用、装着タイヤはポテンザ55Sの265/295-35ZR-18となる。また専用スペーサーとロングボルトKITを使用してZR-1にも装着が可能だ。この場合のタイヤサイズは前265~275/35ZR-18と後315/30ZR-18となる。
それとZ06競技用18-12.0J鍛造マグネシウムホイール(後輪用)も少量だが入荷した。
マグネシウムホイールの為、仕上げは写真の通りブロンズ色塗装となる。フロントに18-9.5J~10.5Jを装着すれば、Sタイヤからスリックまで装着が可能となる。重量は約8kg弱と軽く、Z06でサーキット走行をする場合はお奨めのホイールだ。
(2). TE37ホイール比較
WESTでは1991年頃よりコルベットでサーキット走行テストや、谷田部の最高速チャレンジを繰り返し行ってきた。当初はアメリカ製のFIKSEやDymag等、輸入コルベット専用ホイールを数多く試したが、精度、強度、コスト、サイズの豊富さ、メーカーの協力姿勢等で最終的にはTE37に落ち着いた。また、これまでのサーキットのタイムアタック、谷田部の最高速チャレンジにおいて、記録達成時に装着したホイールを確認したところ、何と全てTE37になっていた事実に我ながら驚いた。当初TE37の6本スポークは、5穴のコルベットとのマッチングに難しさを感じたが、使い続けるとそれらの問題点は解消してしまった。というか機能面があまりに優れているので6本スポークは問題では無くなった訳だ。特に最近では、アメリカからZ06用TE37の問い合わせが届くようにもなった。
さて車体色との組み合わせだが、WESTの黒色Z06にはブロンズを装着する事にした。黄色やルマンブルーにはシルバーのホイール装着がお奨めだ。シルバーのZ06にもシルバーのホイールがマッチする。ブロンズのTE37を黄色やシルバーに装着すると、モータースポーツ風というか走り屋的な凄みが感じられる。今回新発売のZ06専用TE37は、装着時の振動を少しでも抑える為ハブ径をノーマルホイールよりも小さく設定した事等、軽量化だけでなく機能面もより充実させたのが特徴だ。
(3). マフラーテストの結果
次に最近行ったZ06用マフラーの比較テスト結果をまとめてみた。CORSA,Borla(標準タイプとアグレッシブ)、日本製”A”の4銘柄でいずれもZ06専用マフラーだ。項目別に評価してみた。
Borla | Borla アグレッシブ |
CORSA | 日本製”A” | |
---|---|---|---|---|
流通価格 | 318,000円 | 318,000円 | 278,000円 | 40万円弱 |
パイプサイズ | 76.3mm | 76.3mm | 76.3mm | 76.3mm |
音量低回転 | 普通で適切 | 最も大きい | 意外と静か | 普通で適切 |
音量高回転 | 少し甲高い | 最も大きい | 少し甲高い | 普通 |
こもり音 | 小さめ | 最も大きい | 小さめ | 大きい |
重量 | 軽い | 最も軽い | 純正並に重い | 軽い |
X or Hパイプ | X | X | 純正H使用 | H |
出力 | 6000回転まで良好 | 6000回転まで良好 | 6000回転まで良好 | 詰まり気味 |
トルク感 | 良い | やや細い | まあまあ良い | まあまあ良い |
造りの良さ | まあまあ | 粗い | 良い | 磨き仕上げは良い |
溶接不満 約80%MIG溶接 |
溶接不満、特に集合は不満 約80%MIG溶接 |
マフラー構造疑問 約80%MIG溶接。 |
パイプ曲げは不満 約80%MIG溶接 |
|
仕上げ | まあまあ良い | 粗い | 良い | 良い |
総評 | 無難な選択 ほぼ適切な音量 |
大音量が問題 唯一軽さが魅力 |
独特な音色 重量が大きい |
詰まり気味で出力 疑問、こもり問題 |
以上、可能な限り正確に比較テストを行い、慎重かつ客観的に評価した。
尚、詳細をご希望の方は本社工場までお問い合わせ下さい。マフラーはエンジン出力→走り、排気音→乗る楽しさ、快適さ等を左右する最も大切な部品だが、同時に製作する側の立場としては極めて難しい部品と云える。例えば音量ひとつにしても、人それぞれで許容範囲が違ってくる。また音色に対する好みも違う為、一つに絞り込む事が難しい。主にZ06ノーマルマフラーとBorlaマフラーの出力特性、音量等を参考に試作とテストを繰り返した結果、フロントサブマフラー、メインマフラー、後部サブマフラーを必要に応じて組み合わせる事で、それぞれの音量、出力特性に対応できるよう工夫した。またステンレスパイプ、ステンレス製パンチングの厚さと開口率、マフラー本体用ステンレス板、消音材等構成部品の選択にも万全を期したつもりだ。
具体的な仕様は下記の3タイプとした。
1.最も多い4個のマフラーを使用するのが、静かな標準タイプ。
アイドル時の排気音、1600回転付近のこもり音はノーマルマフラーに近く、高回転までストレス無く一気に吹き上がる。乗り易い出力特性で650馬力付近までを対応とし、こもり音はBorlaを下回るレベルに抑えた。全回転域で”スポーツカー的”で甲高く快適な排気音を目指した。装着重量はBorla+4kg程度。
2. フロントサブマフラーとメインマフラーのアグレッシブタイプ。
アイドル時はノーマルに比べて低音の効いたやや”強め”の排気音となるが、中高回転はクォーンと鋭く吹き上がり、7000回転までストレス無く一気に回りきる。高回転はかなり甲高く、”強い”排気音で対応馬力は650馬力以上を確保した。こもり音はBorla並みで乗り易く、装着重量もほぼ同等。
3. メインマフラーのみ装着し、9kg未満の軽量さが特徴のサーキットタイプ。
低回転は意外と静かだが、高回転まで豪快に一気に吹き上がる。最も高出力タイプだが、基本的に競技仕様マフラーとなり一般公道での使用はお奨めではない。
Z06用マフラーの製作にあたり、全ての溶接箇所は100%TIG溶接、サブマフラーは新たに金型から製作し専用タイプとした。メインマフラー、サブマフラーの全てを日本国内で製作した拘りの造りを見て欲しい。造りの丁寧さ、品質、正確さ、機能のどれを取っても前例が無いZ06用マフラーと自負している。
最後に余談だが、マフラーの排気音は実際に乗って聞く事が必要だ。アイドル時の音量と空吹かしだけではなく、実際に加速してみる事が大切。特にこもり音は走らないと分らない。ネットで散見するコルベット用マフラーの排気音を聞けるサービスがあるが、実際には雰囲気を楽しむ程度だ。これでマフラーの良否や音質の判断を行う事は極めて難しいと思う。やはり実際に現車の排気音を、出来れば試乗して聞くのが間違いない。
タイヤ、ホイールの交換時の注意点に関して
タイヤもしくはホイールを交換することで、エラー表示が出ないか?とのご質問を頂く事が多い。確かにC5以降のコルベットは、タイヤ、ホイールの交換後エラー表示が出る事があった。理由として考えられるのは、トラクションコントロールが装着されている都合上、前後タイヤの回転数の差が設定値を超えるとエラー(Check)が点灯した。C6にも同様な設定がされているので、交換する場合は前後のタイヤの直径を注意する必要がある。
例えば、Z06の場合タイヤの直径はF:650mm、R:678mmとカタログ上なっている。つまり前後で28mmの直径差となる。経験上、概ね15~25mm位の差があればエラー表示は出なかったが、前後の直径差を試験的に0に近くした場合は必ずエラー表示が出た。結論は、前後タイヤで必ず20mm以上の直径差を確保したサイズにするのが無難と思う。因みにホイールのインチアップは関係なく、あくまでもタイヤの直径が大切だ。
以前もレポートしたが、再度Z06のタイヤ、ホイールを交換する場合の注意点をまとめた。
1. Z06の純正装着ホイールサイズはF:18-9.5J(+40)とR:19-12.0J(+59)
タイヤサイズはF:275/35ZR18とR:325/30ZR19のランフラットタイヤとなる。
2. Z06の純正装着ホイールの実測重量は F9.5Kg R 11.3kg
TE37ホイールはF 8.5kg R 10.2kg
3. 日本仕様Z06には空気圧センサーは装着されていない。(本国仕様は装着有り)
4. Z06要純正ホイールのセンターハブ径は70.30mmと従来に比べて小さくなっている。
これより大きいハブ径のホイールの装着は要注意。Z06等コルベットはハブのセンタリングが十分でないと振動が出易い傾向があるが、国産、輸入ホイールの大半が70.50mm以上で中には70.80mmを超えたホイールもある。つまりハブ径のガタを小さくし、装着が若干苦労でも振動が発生する要素の少ないホイールが必要。これは谷田部テストコースでの最高速チャレンジで得た経験から断言できる。320km以上を目指した最高速テストでは、タイヤの完全バランスや振れの無い剛性のあるホイールを装着する事は不可欠だった。その経験から得たハブ径だ。因みにZ06用TE37ホイールのハブ径の指定値は70.20mm、面取りは2Cと小さくした。
5. オフセットの変更は、ノーマル値より2~3mm程度変更に抑えるのが無難。
特にZ06のリアフェンダーは上部のみ出ているので、フェンダー上部で”つら一”に合わせると、タイヤ全体が出っ張り気味に見えてしまう。
いよいよ梅雨明けも近そうなのが嬉しい。エンジンルームの熱気を積極的に抜く構造に形状変更したカーボンボンネットの装着テストと空燃比テストレポートの予定。
CORSAマフラー
BORLAマフラー