ZR1実走レポート No.13
ZR1/Z06のタイヤに関して
2006年以来Z06を5年間乗り続けてきたが、実際に履いたタイヤに関して感じてきた事を率直に述べてみたい。またZR1用タイヤも併せてまとめてみた。
あくまでも主観なのでその点はご容赦頂きたい。空気圧はスタート時の冷間のもので窒素ではなく、普通の空気を充填した値だ。
1)Good Year Eagle EMT
ランフラット構造のZ06純正装着タイヤ。グリップは控えめ、走行音は大きめ、乗り心地は固めとなじみ難いタイヤと感じた。このタイヤで走る場合は空気圧は正規の設定値の2.1kg/cmを超えないのが無難。Z06で2.5~2.7kgと高い空気圧では乗り心地が悪いだけでなく、グリップレベルが低く踏めないタイヤだった。ただしタイヤの減りは少なめで持ちは良いので、経済性は高いと云えるかもしれない。このタイヤでZ06の乗り味とサスペンション性能を判断されるのは辛いと思う。
2)ミシュランPS2 ZP
ランフラット構造のZR1純正装着タイヤ。グリップはそこそこ良く、走行音もさほど大きくなく、乗り心地も悪くない。Z06より3年遅れて発売されたが、率直に言ってZ06の純正装着タイヤと比べて格段に乗り易いタイヤとなった。実際に2008年のZR1ニュルブルクリンクテストで7分26秒を達成したのがこのタイヤだったが、Z06サイズも発売されているので重量が重い事を了解頂いたお客様には、2009年以来お奨めしてきたタイヤだ。
このタイヤはミシュランUSA工場で作られるが、タイヤバランスの良さと縦揺れが少ないのが特徴。これまでの30年のコルベット整備で、実際にバランス取りをしたタイヤの中でも、バランスの良さと縦揺れの少なさではトップクラスのタイヤだった。空気圧はやはり2.1kg/cmの正規の設定値が無難だ。
3)ミシュランPS2
最近ミシュランのPilot Super Sportsが発売されたが、それまでの同社の代表的高性能タイヤだ。グリップレベルは日本製ハイグリップタイヤには及ばないが十分に良いと云える。但しサーキット走行には向かないと思う。走行音はグリップレベルの割には低く問題が無いレベルと感じている。乗り心地はスポーツカータイヤとしては良いと云えるが、タイヤ重量が軽い事が乗り心地に反映しているようだ。タイヤのサイドが柔らかいので路面の継ぎ目も軽い感じで越える感じがする。タイヤのバランスの良さに関してはPS2 ZPには及ばないが一般的なレベルでは十分良好と云える。空気圧は正規の設定値の2.1kg/cmが良かった。
但しサイズ設定が難しく、Z06/ZR1共に後輪サイズで苦労した。Z06に装着したが、305/30ZR19では少し寂しく、345/30ZR19を装着の場合はリアインナーフェンダーとの接触が発生したので改造を要した。
4)B.S POTENZA RE11
ご存知日本製ハイグリップラジアルの代表的なタイヤ。グリップレベルは高いが意外に走行音は高くなく乗り易い。サーキット走行にも向く、というか市販ラジアルタイヤではトップレベルと思う。但しバランス取りでのウエイト量は日本製タイヤの平均的なところでミシュランには劣った。また縦揺れも同様にミシュランに劣ったのと、タイヤ重量も軽くなく前輪サイズで約1.5kgの差があった。
さて実走行ではミシュランPS2等を越える高性能タイヤでコーナーリング、高速でのレーンチェンジの挙動の安定感等全てにおいてミシュランを上回った。空気圧はミシュラン等に比べて低く1.8~1.9kg/cmスタート時とした。特に印象に残ったのはサイドウォールの硬さだ。タイヤの組み換えで苦労するほど剛性が高かったのには驚いた。もし325/30ZR19や335/25ZR20の設定があれば間違いなく選びたい。但しミシュランのPilot Super SportsとPilot Sports Cup ZPが登場していない現状での選択だ。
5)NITTO NT05
275/30ZR18、275/30ZR19、335/30ZR19の設定があるのでZ06/ZR1共に選択肢の多いタイヤで、トレッドパターンはなかなか挑戦的で格好良い。
まずグリップレベルはRE11とPS2に次ぐと感じで平均的、全体的に重厚な感じでタイヤの重さを感じた走りだが乗り易いタイヤだった。走行音は決して低くはなく普通~大きめ、バランス取りではかなりのウエイト量を要し苦労した。タイヤ重量は335の幅も反映して重かった。タイヤの縦揺れも日本製タイヤとして平均的なところだが、ミシュランに比べると小さくはなかった。空気圧は規定値の2.1kg/cmでテストした。335/30ZR19サイズのタイヤは他に設定がなく、19-12.0Jに装着できるタイヤとしては貴重な存在。実際にZ06に装着したが、タイヤの大きさがマッチしたのとトレッドパターンで見栄えが最も良かったのは確かだ。Z06/ZR1には335/30ZR19も悪くないと個人的に思う。
6)NITTO INVO
Z06/ZR1の両方のサイズ設定があるのと、独特なトレッドパターンが印象的だ。日本製なので安心感がありサイズの選択肢も多い、その点では食指をそそるタイヤと云える。さてグリップレベルはNT05に次ぐ感じだったが、走高音はNT05に比べてやや低く乗り易く感じた。やはり正規の設定値の2.1kg/cmでテストを行った。またタイヤ重量は決して軽くはなく日本製タイヤの平均値、バランスウエイトの量もNT05同様だった。タイヤの縦揺れもNT5同様平均的ところだったが、総合的にみるとサイズの豊富さ、日本製の安心感、乗り易さ、価格等で妥当なタイヤといえるだろう。
7)TOYO R888
Z06で295/30ZR18と335/30ZR18を10.5J/12.0Jに履いたが、実測のタイヤ幅はかなり広かった。おそらく同サイズのタイヤの中で最も幅広と思われる。
まずグリップレベルは当然だがかなり高く走行音も高いが、温まると意外に乗り易く感じた。Z06では305/30ZR19を19-12.0Jに履いた時は、PS2やRE11に比べてホイールに負けた感じがしなかった。つまりタイヤ幅が広いので12Jが丁度良いサイズに見えるのがR888だった。一般道での空気圧は1.8~1.9kg/cmでテストした。
但しタイヤバランスは良くなかった。コンパウンドが柔らかい事も原因と思われるが、タイヤバランスが狂いやすかった。これまでに履いたタイヤの中で最もバランス取りに苦労した。それと半年程経過するとグリップがかなり低下したのも気になったが、タイヤソフナー(タイヤの軟化剤)を塗布することでグリップが回復したのもこのタイヤの特徴で、いかにもSタイヤと言えた。またトレッドが柔らかいのが原因と思われるが、路面の砂利を跳ね上げるのが多かったので、一般道を走る時はそれが気になった。
8)ミシュランPilot Sports Cup
ミシュランの競技用タイヤで公道走行可能タイヤと説明されているが、日本製のSタイヤとはかなり違う印象を受けた。
まずグリップレベルは日本製Sタイヤに比べて低めだ。特に一般道での印象は決して乗り易くはないと感じた。タイヤ重量も軽くバランスも良いタイヤなのだが、適温まで温まらないとコントロールが難しい。Pilot Sports Cupの場合、ヨーロッパ等でこのタイヤだけのワンメークレースが、本来の性能を生かせる場なのかもしれない。
近々に登場予定のPilot Sports Cup ZPは、コンパウンドも含めてZR1/Z06にマッチしたタイヤとなる事を期待したい。