ZR1 実走レポートNo.11
ZR1の日常点検に関して
ZR1/Z06の日常点検箇所
1)タイヤの空気圧チェック
タイヤの空気圧は必ず指定空気圧の210KP(約2.1kg/cm)に合わせる事が基本だ。新車納車時は必ず高めの空気圧になっていることが多い。低めより高めの空気圧が無難との考え方と思われるが、ZR1/Z06は高すぎる空気圧は乗り心地が悪いだけでなく、本来のサスペンション性能が発揮できない。
コルベットのサスペンション特性は空気圧やタイヤバランスに非常に敏感と経験から云える。コルベットで乗り難いとの相談を受けた時は、まず空気圧を確認する事から始めている。
空気圧表示のステッカーは運転席側のドアを開けたピラーに貼られているので確認できる。指定空気圧の2.1kg/cmは冷間時、つまり走り出す前の数値となるのでガレージ等で計るのが確実だ。
因みにBSのPotenza RE11では、走り出す前の冷間時の空気圧を約1.9kg/cmに合わせている。RE11はサイドウォール剛性が高い事もあり、低めの1.9kg/cm辺りでスタートしても走行中の温間では2.3kg/cmの適温となる。できれば走り終えてガレージに戻った時にタイヤの空気圧を2.5kg/cm位にに高めておくことをお奨めする。1週間に一度程度乗る場合は、低い空気圧での保管はタイヤ変形の原因となるので、高めの空気圧で保管すれば変形を防げる。
それと空気圧の管理には正確な空気圧計が不可欠だ。使用しているのはBridgestone Motor SportsのRacing Air Gauge 4kg/cm計だ。通常の空気圧が2kg程度のコルベットでは4kg/cm計が正確に測れる。トラック兼用の8~10kg/cm計では正確な測定が難しい。
2)アライメントの再確認
新車で納車された多数のZ06/ZR1のアライメントを測定した経験だが、数値にかなりの開きがあった。理由は製造メーカーでのアライメント数値が許容範囲内で合わせてあるのではと考える。例えばトーインを例に取ると前後共に+mmから-mmまでと幅のあるトーイン値が設定されているが、前輪がOUTに最大で後輪がINに最小では、全く適切ではないトーイン値になるので直進性が著しく悪くなる。
要は新車であってもアライメントの再確認をすることが決して無駄ではないと云える。ベストなアライメント数値にピンポイントで合わせるのが良い。
先般のニュルブルクリンクでの2012 ZR1の走りを見た方も多いと思うが、GTウイングも装着されていない新車状態でもあの走りが可能なのだ。それには正確なピンポイントのアライメント調整と正確な空気圧が不可欠と断言できる。
3)エンジンOILとミッションOIL
Z06/ZR1共にエンジンOILはMobil1 5W-30が指定OILとなっている。Mobil1 5W-30は同じ粘度表示の5W-30の中でも特に粘度が低い。理由は低い油温に対応する事と低燃費が目的と思われる。以前Z06レポートで触れたが、Z06は(ノーマル状態)では水温より油温が低くなることが多かった。
特に冬場は油温が80度以下に下がることがあり問題と判断した。エンジンOILの役目は潤滑だけでなく、混入した水分やガソリンを蒸発させる事も必要だ。その為には最低95度~100+度程度の油温にならないと水分やガソリンを蒸発させることが出来ない。特にガソリンで希釈されることで潤滑が不十分になり危険でもある。
またZ06では逆に水温が高めに設定されているのも特徴だ。理由はエミッションコントロール(排気ガスの浄化等)らしいが、高出力を狙う場合は低く安定した水温が不可欠となる。これらの対策としてアルミ製の大容量ラジエターと水冷式OILクーラーを装着した訳だ。
ZR1はこの点に関してはかなり改善されていた。アルミ製のラジエターはZ06に比べてかなり容量が大きくなり、また水冷式OILクーラーが採用されたことで、油温管理が容易かつ水温より油温が高く保たれる様になった。
経験から云うと水温80度~85度辺りで、油温が15度~20度高めの100~105度前後が高出力を狙う場合の適温だ。サーキットではスピードの割りに高回転を維持して走るので水温/油温は高めになるが、少しでも低く保てるように工夫したい。Z06/ZR1は大排気量エンジンを搭載し速度も高くなるので、街乗り仕様とサーキット仕様ではエンジン冷却とブレーキ冷却の必要量が根本的に違ってくる。ノーマルZ06/ZR1のラジエターのマウント方式(斜め下向きに抜く仕様)ではサーキット走行での適切な水温維持は難しいと思う。C6R等のレースカーでは斜め上に抜いている。
サーキット走行をする場合は、まず適切な水温と油温とブレーキ冷却を念頭に置き、それを保てるようしっかり準備をしてから走りたい。
まとめると、完全ノーマルのZ06では指定のMobil1 5W-30が無難だ。
もし他のOILを使用するなら5W-30だけでなく、100度での動粘度が同じ程度のOILとなる。
エンジンがチューニングされて大容量ラジエター等も装着し、水温/油温が適切な範囲に保たれているのなら、少し粘度が高めエンジンOILでも可能だが5W-40もしくは10W-40辺りまでが無難だろう。15W-50等の高粘度OILを使用すると燃費だけではなく出力も落ちるので要注意だ。
一般的にエンジンOILは優れた性能で油膜が保てるなら、粘度は低い方が走りも燃費も良くなる。
ZR1は出力も大きくなるので若干粘度の高めの5W-40を使用している。低温サーモを装着しているが、気温25度なら水温も安全圏だ。今後出力アップに伴いノッキングの危険性が増えるので大容量ラジエターの装着を検討している。
それと上記でも触れたがエンジンOILの粘度を比較する場合、油温100度での動粘度も併せてチェックする事が大切だ。同じ5W-30のエンジンOILでも100度での動粘度には、10~14辺りまで開きがあるので粘度の違いがある事になる。100度での動粘度はOIL諸元表に明記されているので確認できる。
OIL量の点検は助手席側にあるDry Sumpタンクで行うが、エンジンを止めてから一定時間(例えば2分)と決めて行う。エンジンを止めた後で測定する時間が違うと若干OILレベルが変わることがある。
今回新車時の最初のOIL交換は通常より早めの1,000kmと2,000kmで行ったが次は5,000km時の予定、それ以降は概ね4~5,000km毎に交換となる。尚OILフィルターは毎回交換した。
OIL交換の時、可能なら廃OILをきれいなトレーに抜いてOILの色、金属粉等をチェックしたい。
エンジンにとってOILは人に例えるなら血液で、OILを詳しく見ることでエンジンの状態の一部が判る。
例えば金属粉でも磁石に付くのは鉄、付かないのはアルミ等なのでどの部分の金属粉かが推測できる。
ミッションOILはATFつまりオートマOILが指定となっている。理由は主に低燃費のためだが、チューニングしたZ06の夏場の激しい走りでは、シフトの渋さやトランスミッションのギアノイズが気になった。
一般的なATFの100度での動粘度は6~7、M/T用OILでは13~15と高くなる。夏のサーキット走行等ではM/T用OILの方が無難だが、冬季の一般道ではシフト操作が重くまた抵抗にもなるので、もし使用するなら粘度は低めが良い。経験では100度での動粘度が10の高温タイプATFが、ノイズの低さとシフト操作感ともに好結果だった。
4)バッテリーに関して
Z06/ZR1ともにバッテリーの待機電流は少なくないので、3~4週間エンジンをかけずに置くとスターター(セル)が回らなくなる事は珍しくない。
できれば最低でも一週間に一度は最低30分以上乗るのが理想だ。もしバッテリーあがりの場合はエンジンルームに接続ターミナルがあるので使用できる。乗る時間の無い場合は常時充電器を使用するのも良いだろう。
余談だが、特に梅雨シーズンには除湿材(ホームセンターで入手できる500ccタイプ等)を3~4個車内にいれておくと良い。おおよそ半年位は除湿効果があるので便利だ。(もちろん走る時は車外に出す。)
それとコルベットのエアコンフィルターの交換も年に一度は必要だ。エンジンルームのOilタンク横のバルクヘッド側に蓋があるので、スプリングを外して中のフィルターを取り出せる。フィルターには向きがあるので注意して交換する。