ZR1実走レポート No.4
620馬力Z06と638馬力ZR1の本気加速テスト
実はZR1のスーパーチャージャーチューニングを行う前に、データ取りも兼ねて加速テストを行った。
仕様は下記の通り。(出力表示は全てSAE Net表示)
モデル | 620馬力 Z06 | 638+馬力 ノーマルZR1 |
---|---|---|
エンジン | LS7 改 620馬力 | LS9 ノーマル+Corsa マフラー |
ミッション | ZR1 用クロスレシオ | ZR1 用クロスレシオ |
デフ | 3.42:1 +O.S 製LSD | 3.42:1 ZR1 ノーマルLSD |
実測車重 | 1,348kg 燃料無し重量 | 1,470kg 燃料無し重量 |
スポイラー等 | ZR1 Splitter & Z06 リア | ZR1 Splitter & ZR1 サイドとリア |
後輪 サイズ | 305/30ZR19 | 325/25ZR20 |
テスト結果
低速ギアではホイールスピンが発生し、正確な加速の比較が難しかったので約3速3,500回転辺りからの加速を比較した。
また公平さと正確さを保つ為、双方の車輌のドライバーを交代してそれぞれ複数回のテストを行った。もちろん本気で踏んだ。
まず3速3,500回転からの加速は両車ともほぼ並んだ状態となったが、4速にシフトアップ後は徐々にZR1がZ06を離していった。
更にシフトアップ後も差は縮まる事は無く、ZR1とZ06の差は徐々に大きくなった。複数回のテストを行ったが結果は変わらなかった。
両車には約120kgの重量差があったが、約20馬力の出力差と約10kgmのトルクの差が効いたようだ。但しZR1はCorsaマフラーを装着しているので、完全なノーマルとはいえず実際には650馬力以上と思われる。
Z06 の実力
620馬力Z06とノーマルの505馬力Z06の加速を比較した場合、3速~5速で1速高いギアでほぼ同等の加速だった。
つまり505馬力Z06の3速と、620馬力Z06の4速がほぼ同等の加速となった訳だ。
1998年の谷田部最高速チャレンジはC4 コルベットで行った。エンジンはDOHC 6.0LのLT5で最高出力は550馬力程度だったが、公式記録として最終的には316.82km(歴代NA車としては最も速い記録)を達成した。この時のC4コルベットと現行のC6 Z06 では、空力と足回りは明らかにZ06が優れているので、もしZ06で最高速チャレンジを行えば、かなりの記録が期待できると思う。
事実、アメリカでのZ06公開テストでは、ノーマル状態ながら実測最高速 310~315km以上を何度か達成した。
但しZ06の公表最高出力の505馬力(SAE Net値)は、かなり控えめな数値とも云われているので、実際は20馬力程度高出力の530馬力辺りらしい。
また車輌重量に関しても、公表値より20kg程軽い事実も複数のZ06で確認した。この傾向はZR1も同じで、やはりカタログ車重は実測値より大きかった。
要するにZ06やZR1はカタログ値より軽い車体に、カタログ値を上回る出力のエンジンを搭載した何とも面白い車というのが正体だが、我々オーナーとしては大歓迎だ。
Z06/ZR1
Z06/ZR1はエンジンの潤滑方式にドライサンプを採用する等、走り屋にも十分対応できる仕様が嬉しい。C7コルベットの一部情報のメーカー発表が有ったらしいが、Z06/ZR1が最後のフロントミッドシップモデルになる?かも知れないのが少し残念な気もする。
Z06/ZR1共に公道ではまず負けない。加速と高速安定性に限ればヨーロッパ製スーパーカー等とは互角以上の走りが確実に可能だ。ヨーロッパのGT3レースを見ればその実力が判る。但しGTRだけは別だ。次のZR1でもGTRが目標の一台となる。
またホイールのレイズさん、LSDのO.S 技研さん、ショックのエナペタルさん等には感謝している。日本の優れた技術力で造られるホイールやLSDやショックアブソーバー無しでは、Z06/ZR1の走りは追求できないだろう。
Z06/ZR1のエンジン出力比較。尚、数値はSAE Net表示なので日本のJIS Net表示では若干大きくなる。 一例、Z06の馬力はSAE Net表示では505馬力が、JIS Net表示では511馬力となる。同様にZR1は SAE Netでは638馬力が日本では648馬力となる。また下記はGM測定数値とLingenfelter社の測定数値があり、それぞれで測定機器等が違うのであくまでも参考数値として見て欲しい。
モデル | 最高出力 | 最高トルク(SAE Net表示) |
---|---|---|
ノーマルZ06 | 505 | 63.8 |
WEST Z06 | 約620 | 約76.1 |
ノーマルZR1 | 638 | 82.1 |
WEST ZR1 | 約710 | 約92.4 |
GT9 ZR1 | 約750 | 約99.2 |
GT9 ZR1まではスーパーチャージャーを19%増速した場合のチューニングとなる。30%+の増速も可能だが、スーパーチャージャーメーカーの定める許容安全回転数の限界に極めて近づく事になるので慎重さが必要だ。因みに30%+増速では出力800馬力オーバー/トルク108kgmが実際のテスト値として普通に見かける 。GM PerformanceカタログのデータではZR1のシリンダーブロックGM品番12584727の許容出力は900馬力と明記されているのでまだまだ余裕だ。もし鉄製レース用LSXシリンダーブロック GM品番19244057なら許容出力は2,000馬力となるので、Twin TurboにしてZR1/Z06に搭載することも視野に入れたい。この場合の最高出力は現行WEST ZR1の2倍程度は可能となる。本気で踏めるZR1と、強度のあるシリンダーブロックで今後の目標の一つが見えてきた気がする。
思い返せばこの36年は最高速チャレンジとサーキットに明け暮れた。初めての谷田部最高速チャレンジは1975年のモーターマガジン誌で、テスト車はTrans Am455。記録は213.91kmでドライバーは故 望月修氏だった(WESTとしてではなくプライベートとして)。次は1982年のOption誌で454コルベットの285.71km、ドライバーは稲田大二郎氏だ。1987年も同じく稲田氏のドライブでC4 Twin Turboコルベットの284km。1998年にはオートワークス誌で車はC4 ZR-1、316.721kmをレーシングドライバーの菊池氏のドライブで達成した。谷田部最高速テストは無くなったが、これまでの集大成としてコルベットZR1で再びチャレンジする事を決めた。ライフワークとしてやるつもりだ。副業ではSurgeon 338Lapuaをパートナーとして目標達成を目指しているが、これも奥深く、ライフワークとなっている。