Z06/ZR1の楽しみ方 その2
5. 熱対策
Z06/ZR1共に小さい車体に大排気量エンジンを搭載しているので、夏場は苦手というか弱い。特にZ06は高圧縮の7Lエンジンを搭載している割には、ラジエターの大きさが小さい。Z06純正ラジエターの大きさは、先代C5で5.6Lエンジン搭載時と同等程度だ。水温の変化が過敏過ぎるのは、ラジエターサイズが小さいのも一因だろう。水温を低温で安定させる為には、十分なラジエター容量と冷却を優先したマウントが不可欠だが、スペース的に不可能なので、外気の導入やHoodの工夫で対応せざるを得ない。
対してZR1は低圧縮の6.2Lエンジンを搭載しているが、加給時の高出力に対応した一回り大きなラジエターサイズになっている。その恩恵か渋滞時等 加給圧の掛からない状況では、意外に水温は若干だが低めだった。実際に複数台のZ06/ZR1で水温をチェックしてみたが、平均してZR1の方が水温を低めに保っていた。
これまでに行った作業の中で、実際に効果が確認出来た熱対策について述べてみたい。
(1). 外気導入と熱気の排出の促進。
フロントバンパー中央のダクトの開口と、フロントグリル内左右樹脂板の通風孔加工。Hood裏面前端部分に溝形状の加工を行った。これらの加工で、エンジンルームへの外気導入がかなり改善された。また熱気の排出は、Hood裏面後端部分を幅広く削除加工して通風を良くした。尚、Z06の場合はHood裏面の防音材も取り外した。
(2). エンジンカバーの取り外し。
Z06/ZR1共にエンジンジ上部にカバーが装着されているが、これでは熱がこもると思われる。カバーの下には、インジェクター、イグニッションCoil、水冷式インタークーラー等、熱を避けたい部品だらけだ。せめて夏場だけでも、カバーは取り外したい。Z06の場合、助手席側は比較的に簡単に取り外せるが、運転席側は燃料ラインがあるので注意して外す必要がある。
(3). 低温サーモスタットの取り付け。
開弁温度が低いサーモスタットを装着する事で、水温を下げる事ができる。但しラジエター容量は変わらないので、あくまでも水温の上昇を遅らせる効果となるが、それでもかなりの効果があった。
(4). 大容量ラジエター装着。
Ron Davis製ラジエター等を装着して水温低下の効果はあったが、何度か漏れのトラブルが発生したのも事実だ。それ以降、ラジエターの加圧チェックを徹底するようにした。その結果トラブルは減ったが、ラジエターに限らずアメリカ製品は、ぶっつけ本番ではなく事前チェックが必要だと思う。また装着経験と実績のある部品を選択するのが無難だ。またZ06/ZR1では、Ron Davis等のラジエター容量が最低限必要。つまりこのサイズを標準サイズと考えるのが妥当と思う。
(5). Z06/ZR1の渋滞時の対応。
Z06/ZR1共にエアコンをONにする事で、電動Fanが強制的に回り水温の上昇を抑えるので、渋滞時はエアコンONが基本。またアイドル時のエンジン回転数は600~800回転だが、たまに少し高めの1,200回転位に保つと水温が下がりやすい。それと10~30km程度の徐行運転では、フロントグリルからの冷却風が弱く、水温が下がらない事がある。ラジエターの前に、OILクーラーやエアコンのコンデンサーがある為、十分な冷却には速度が必要となると思われる。WEST Z06での経験だが、外気温32度の真夏日に6速4,000回転辺りで走ると、予想以上に水温が下がった事があった。(トランスミッションはZR1用クロスレシオに交換)
水温110度オーバーに関して
Z06/ZR1共に水温は80~85度、油温は90~100度辺りに保ちたい。例えば水温が100度になるとエンジン保護の為、点火タイミングが遅れる様に設定されているので、本来の性能は発揮できない。また電動ファンの作動開始温度は108度に設定されているが、主な理由はエミッションコントロール(排気ガスの浄化)の為に、水温を高く保つ必要があるらしい。率直に言ってこれには異論を唱えたい。排気ガスの浄化促進は当然だが、安易に水温を高温に保つのは如何だろうか。スポーツカーとして走りを妨げない、適切なエミッションコントロールの開発を期待したい。
余談だが、アメリカ製レーシングエンジンには、組み立て後のエンジンベンチテスト(馬力測定)レポートと仕様等が付いて来たが、ベンチテスト時のエンジン水温は69~78度位と極めて低温なのが特徴だった。当初これでは実際にレースカーに搭載して、レースを走るより低いのではと疑問に思ったが、経験を重ねるうちに解った事は、これが大排気量アメリカンV8レーシングエンジンの現実、というかエンジン破損のリスクを避ける付き合い方だった。
つまり水温の上昇=エンジン各部の熱に拠る歪みが大きくなる→エンジン破損の危険性が高くなる、というリスク回避の為、低い水温でベンチテスト(馬力測定)を行ってきたのでは、と推測する。
これらの経験からも高出力エンジンの水温は、常に80~85度辺りに保ちたいと思っている。