Z06実走レポート No.23
最近の作業箇所は
- ロールケージのベース取り付け
- ルーフパネルの防音対策と取り付け部の強化
- フロアートンネルのアルミパネルを強化タイプと交換
- ZR1用デフの詳細とOS技研製スーパートラクションLSDの組み込み
- ZR1用クロスレシオトランスミッション搭載
- 異音対策
- OILクーラーテスト
暑い日が続くが精力的に作業をこなした。
(1). ロールケージのベース取り付け
かねてより取り付けを予定していたロールケージの取り付けに着手した。4点式ロールケージの基本は45mm径のアメリカ製だが、40mm、2.0mm厚のシームレスクロモリ鋼管で製作する事にした。このサイズは軽量化と強度の妥協点で決めた。またロールケージにも機能美と造りの良さを求めたい本音もある。今回輸入したアメリカ製のロールケージは機能的には問題が無いと思われるが、溶接箇所等があまりにも大胆で率直に言って好みに合わない。
作業はZR1用クロスレシオトランスミッションへの交換作業時に合わせ、車体下側からもフレームにロールケージの取り付けベースを追加固定する事にした。Z06をリフトアップすれば判るが、車体下側からフレームは見えるがデフ、ミッション、マフラーパイプ等で隙間が無く、とてもフレームにベース取り付け作業ができない。その様な訳でデフ、トランスミッションを下ろした際にローケージのベースプレートを取り付けることにした。
因みにZ06の場合4点式、6点式ロールケージで他の箇所のベース取り付けは、カーペットを剥がせば作業可能だ。今回のZ06はアルミフレームなのでロールケージのベースプレートを溶接する事は検討の結果、強度確保が難しいので控えた。通常はリアラゲッジ部分の床を切り取り、フレームにベースを溶接付けするが今回はL型ブラケットを製作してBoltと強力な接着剤でフレームに固定した。
一般的にアルミの溶接は強度確保が難しい事が多く、補強の作業が逆の結果を招く危険性がある。最初は溶接を検討したので、溶接機メーカーにフレームのサンプル小片を送り溶接条件と溶接棒の選定を依頼したが、好結果を得なかった。
(2). ルーフパネルの防音対策と取り付け部の強化
Z06もルーフが外せる。簡単な脱着作業ではないが写真の通りとなる。
ルーフを取り外した際に取り付け部の補強と、内張りの内側に防音材を貼った。
次にルーフの取り付け強化に取り掛かった。通常Z06のルーフは前4本、後が6本の6mmBOLTで固定されている。これを8mmBOLTに交換した。もちろんナット部もBOLTに合わせて8mmに変更した。
また強度確保を考慮してマグネシューム部分への取り付けはスタッドBOLTに換えた。
これは効いた。一連の作業終了後のテスト走行ではっきりと違いが出た。表現は難しいが、確実にカッチリ感がでた。それと防音材も効いた。明らかに室内が静かになった。特に4000回転以上の高速走行中でのエンジン音が低くかつ甲高くなり、シフトアップ時に思わずタコメーターを再確認したほどだ。
(3). フロアートンネルのアルミパネルを強化タイプと交換
フロアートンネルのアルミ板を交換した。フレームの剛性アップと防熱、防音が狙いだ。オリジナルは約3mm厚のアルミ板、取り付けたのは6.5mm厚で6000番台 のジュラルミン板、因みにC5は1mmの鉄板製となる。
このアルミ板は排気管の上に装着されているので、今回のトランスミッション交換作業時にに合わせて作業した。
また遮熱と防音効果を狙って、アルミ板の上に防熱材と防音材を貼った。具体的にはビリオン社の棒熱マットとアメリカ製のCOOLマットを使用した。
これも効果があった。車内が明らかに静かになったのと、コンソールBOXの中が熱く ならなくなった。Z06を納車されて間もない頃、このコンソールBOX内部が熱くなるのには驚いたものだ。CDが熱で曲がったと聞いた事もあった。
(4). ZR1用デフの詳細とOS技研製スーパートラクションLSDの組み込み
さて今回の注目作業だ。おそらく日本で始めてZR1のデフの詳細を見ることになったと思う。ZR1のデフは、まずケースが変わった。リブが太く大きくなった。これは明らかに剛性 アップを狙っての変更と思われる。
またケースのアルミ鋳物の肌が変わったようにも感じる次にシャフトの太さは外観からは左右同じに見える。ZR1の説明で左右のシャフトサイズが強度確保の理由で異径になっている。具体的には左側が太くなった、との記事を読んだが外見からは判らなかった。基本的にはケース以外はZ06と同じ様にに見えた。
早速デフをOS技研に送り、内部の分解チェックとスーパートラクションデフ(LSD)の組み込みを依頼した。以下OS技研での分解作業報告まずデフのリング&ピニオンはZ06と同様のようだ。寸法は全く同一で材質も色から判断して同じらしい。LSD部分の寸法も全く同じで、従来から設定のあるZ06用のLSDがすんなり装着できた。やや拍子抜けするほど同じだった。左右のシャフトサイズの違い云々もOS技研製のシャフトと全く同じ考えで強化されていた。説明するとOS技研ではZ06コルベット用LSDの組み込みにあたり、左右の強化シャフトを自作しLSDと一緒に組み込んでいた。従来の純正シャフトでは強度不足が予想されたからだ。同じ考え方で強化シャフトをZR1から採用したようだが面白い。LSDクラッチの材質等はこれから確認の予定。
早速デフが戻ってきたが今回Z06への装着は見送った。現在Z06にはOS技研製のサイズアップされた新しいLSDケースが組み込まれており、そのテスト中だからだ。ZR1のデフは秋頃に改めて搭載の予定している。
(5). ZR1用クロスレシオトランスミッション搭載
さて今回最も期待した作業であるZR1用クロスレシオトランスミッションを搭載した。 C4のZF製トランスミッション以来GMではコルベットに6速ミッションを搭載しているが、 実際には5速ミッションとして使用し、6速はめったにシフトできなかった。理由は6速のギア比が0.49~0.50と極端に高く、通常の走行ではギクシャクして走れなかったからだ。
具体的なギア比は次の通りだ。
Z06用ミッション 2.68 1.71 1.30 1.00 0.75 0.50(※ZF6速もほぼ同じ)
ZR1用ミッション 2.29 1.61 1.21 1.00 0.81 0.67(※レース用に近い)
因みにデフのギア比はZ06、ZR1共に3.42:1となる。
まずミッション外観からの違いはインプットシャフトが太くなった事と、OILクーラーの フィッティングの位置が変わった。ケースはデフの様な顕著な違いは無く同じに見える。実際の取り付けもOILクーラーホース以外は問題無かった。
さて走行した結果だ。これは驚いたが、すばらしいミッションだった。シンクロが強化されたと記事で読んだ が、確かにシフトが入り易くスムースで、走行中のギア音も低い。一言で言えば乗り易いミッションだ。元々のZ06のミッションも乗り易かったが、ZR1のミッションはシンクロの強化とベアリ ングが最適化されたのか、より静かで良くなった。さらにクロス化されたミッションとハイカム仕様のLS7のマッチングも素晴らしい。加給されたZR1も素晴らしいだろうが、ハイカム仕様のLS7とクロスレシオミッションの 組み合わせは走る幸せを感じさせてくれる。最近のテストコース、カントリーロードから一般国道を経て高速を走り、帰りは峠を攻めてから戻る110kmをこの3日間で5往復もしてしまった。
コルベットを乗り続けて33年以上になるが、これまでで最も素晴らしいと断言できるミッションに出会えた、というのが率直な気持ちだ。おそらく通常の6速ミッションはこれが最終かもしれない。次期C7は2ペダルのパドルになるのだろう。最近は不景気に税務調査と頭痛の種が多かったが、久し振りに至福の時を過ごせた。GMさん、有難うと率直にお礼を言いたい気持ちだ。
このミッションは良い。すこぶる良い。個人的な意見だがシフトダウン時の回転合せが極めて楽になった。シフトがスムースで入り易い事もありこのミッションに惚れてしまった。もし、元のZ06のミッションに戻すかと尋ねられたら即座にNOと返事するだろう。このミッションの恩恵で走りはさらに速くなった。当然の事だがクロスレシオなので回転を落さずシフト出来る。結果的にアベレージスピードが高くなったが、唯一対策の必要を感じたのは、油温、水温が高くなる事だ。早速OILクーラー等の作業を開始する事にした。
(6). 異音対策
Z06に乗り始めてから3年を経過したが、防音作業を続けて異音、雑音の発生箇所が明らかになってきた。
①ルーフパネルの剥がれによるヒタヒタ音
→パネルの交換修理で直ったが、原因がルーフパネル剥がれというのは後で判った。お陰で3年間悩んだ。
②ブレーキからの異音
→Brembo製のキャリパーとローターを装着しているが、始動後30分程度経過して熱を持ってくるとブレーキ付近から微振動が発生した。
(7).OILクーラーテスト
ZR1用クロスレシオミッションへの換装に伴い、高回転を維持して走る事が増えたことで油温、水温を下げる必要が出てきた。まず’09仕様のZ06&ZR1用大容量ドライサンプタンクに交換した。次にこれまでラジエター内蔵の水冷式OILクーラーだったが、少しでも容量を確保すべ く純正空冷式OILクーラーに戻した。結果は油温は余裕でOKというか少し低過ぎ、水温やや高めとなった。今は年間を通して最も暑い季節なので条件的には厳しいが、より水温を下げるべく作業を開始した。水温は常時80~90度以下で、できれば85度以下が目標だ。油温は水温プラス10~15度で95度~105度程度に保ちたい。これは一般道の走行から高速道路走行、サーキット走行も含めてだ。